「いつか自分のラジオ番組を持って、好きな音楽やトークを電波に乗せたい」 「会社のPRのために、社長が語る番組を作りたい」
そんな夢、実は意外と簡単に叶います。 ラジオ業界には「持ち込み番組(枠買い)」というビジネスモデルが存在するからです。

今回は、ラジオ局にコネがなくてもゼロから番組を立ち上げる方法、スポンサー獲得術、
そして知らないと危険な「放送禁止用語」や「薬機法」などのコンプライアンスについて、業界の視点から実践的なテクニックを公開します。
第1章:そもそも「枠買い(持ち込み)」とは?
通常、ラジオ番組は局が制作費を出して作りますが、「枠買い」はその逆です。
「放送枠(時間)」をあなたが買い取り、制作費もあなたが負担して番組を放送する形です。
不動産に例えると、ラジオ局という「大家さん」から、日曜日の夜30分という「部屋」を借りて、自分のお店を開くようなイメージです。
気になるお値段(相場感)
局の規模や時間帯によってピンキリですが、ざっくりとした目安は以下の通りです。
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コミュニティFM(地域FM):
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月額 2万円〜10万円 程度(週1回30分放送の場合)
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個人でもお小遣いの範囲で始められるレベルです。
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県域AM/FM局(地方):
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月額 数十万円〜
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在京キー局(首都圏):
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月額 数百万円〜一千万円クラス
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初心者が狙うなら、まずは審査のハードルも低く、費用も安い「コミュニティFM」一択です。
第2章:最大の壁「スポンサー獲得」の極意
枠を買うにはお金がかかります。自分のお財布(自腹)で賄うのも一つの手ですが、継続するには「スポンサー(出資者)」を見つけるのが賢明です。
しかし、無名のあなたの番組に、誰がお金を出してくれるのでしょうか? ここで使える「3つの営業テクニック」を紹介します。
方法1:「ゲスト出演権」を商品として売る
これが最も成約率が高い方法です。
単に「CMを流します」と言っても、無名番組のCM効果には誰も期待しません。
そこで、「社長、来月番組のゲストに来て、30分まるまる会社の宣伝をしませんか?」と持ちかけるのです。
「出演料+宣伝費」として協賛金を頂く形です。
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メリット: スポンサーは「ラジオに出た」という実績ができ、自社のHPやSNSで二次利用できる。
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あなたのメリット: 毎週ゲストを呼べば、トークのネタに困らず、制作費もペイできる。
方法2:クラウドファンディングで「応援団」を募る
最近増えているのがこのパターンです。
「地元の面白い情報を発信する番組を作りたい!」とCAMPFIREなどで資金を募ります。
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リターン(お礼)の例:
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番組内でのお名前読み上げ(3,000円)
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1日パーソナリティ体験権(30,000円)
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方法3:バーター取引(現物支給)
現金をもらうのが難しくても、「モノ」なら出してくれる企業は多いです。
(例:番組打ち上げの会場費を飲食店に無料にしてもらう代わりに、番組で店を紹介するなど)
第3章:放送局を口説き落とす!「企画書」の書き方
お金の目処がついたら、次は放送局へのプレゼンです。 以下の必須項目をA4用紙1〜2枚にまとめましょう。
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番組タイトル(仮)
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コンセプトとターゲット(誰に、何を伝えるか)
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放送形態(完パケか、生放送か)
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予算計画(スポンサーの見込みはあるか)
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構成案(タイムテーブル)
第4章:【最重要】放送中止もありえる?知っておくべき「3つのタブー」
ここが今回一番伝えたいポイントです。
ラジオ局は、総務省から免許をもらって運営しています。
そのため、法律やルール(放送法、公序良俗)には非常に敏感です。
あなたが持ち込んだ番組内容が、以下の3点に触れていると判断された場合、
契約途中でも「放送中止」になったり、修正を命じられたりします(考査落ち)。
1. 「薬機法(旧・薬事法)」の壁
健康食品、サプリメント、化粧品などのスポンサーがついた時に、最も気をつけるべき法律です。 この法律の鉄則はシンプルで、**「医薬品じゃないのに、病気が治ったり、身体機能が変化したりするようなことを言ってはいけない」**という点です。
「個人の感想です」と最後に付け足せば何を言っても良い、と思っている人がいますが、それは大きな間違いです。ラジオショッピング風のトーク事例で、危険な境界線を見てみましょう。
【絶対に言ってはいけないNG表現 vs ギリギリ言えるOK表現 5選】
① ダイエットサプリの紹介
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❌ NG(放送禁止): 「これを飲むだけで、脂肪が燃焼して1ヶ月で5キロ痩せました!」 →「痩せる」「脂肪が燃える」という身体の変化を断言するのは違法です。
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⭕ OK(言い換え): 「これを飲み始めてから、スッキリした毎日を送っています!」 「美容と健康の維持のために、運動と合わせて飲んでいます」 →「スッキリ」「維持」などの抽象的な言葉に留めます。
② 化粧水・美容液の紹介
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❌ NG(放送禁止): 「肌に浸透して、シミ・シワが消えます! 若返ります!」 →「消える」「若返る」はアウト。肌の奥(真皮)まで浸透する表現もNGです。
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⭕ OK(言い換え): 「お肌にハリとツヤを与えてくれます!」 「乾燥による小ジワを目立たなくしてくれます(※効能評価試験済みの場合)」 →「与える」「整える」という表現が基本です。
③ 健康茶・青汁の紹介
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❌ NG(放送禁止): 「飲むだけで高血圧が治ります! 糖尿病の予防にも!」 →病名の記載や、治療・予防効果を謳えるのは「医薬品」だけです。
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⭕ OK(言い換え): 「生活習慣が気になる方におすすめです!」 「毎日の栄養補給にぴったりです」 →「気になる方へ」という表現で、リスナーに察してもらうのが定石です。
④ 膝・関節系サプリの紹介
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❌ NG(放送禁止): 「膝の痛みが取れました! 軟骨が再生します!」 →「痛みが取れる」「再生する」は完全にアウトです。
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⭕ OK(言い換え): 「元気に歩きたい方を応援します!」 「階段の上り下りも、スムーズな気分です」 →あくまで「動作のサポート」や「気分の変化」として伝えます。
⑤ 育毛剤・シャンプーの紹介
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❌ NG(放送禁止): 「髪が生えてきます! 薄毛が治ります!」 →「生える」と言っていいのは医薬品(リアップ等)だけです。
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⭕ OK(言い換え): 「頭皮を健やかに保ちます」 「髪にハリ・コシを与え、ボリューム感が出ます」 →「頭皮環境のケア」や「今ある髪への物理的な効果」ならOKです。
【最重要】病名・免疫・ウイルス対策の表現
ここが一番の落とし穴です。 基本的に、医師が処方する薬以外のモノ(サプリ、健康茶、雑貨など)で、
具体的な「病名」を出したり、「治る(治療)」「防ぐ(予防)」と言ったりすることは一切認められていません。
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❌ NG(放送禁止・逮捕リスクあり): 「これを飲めば免疫力がアップして、インフルエンザやコロナにかかりません!」 「花粉症が治ります!」 「ガンが消えました!」 →「免疫力アップ」という言葉は、実はNGワードです(体の機能変化にあたるため)。また、具体的な病名を出して効果を謳うことは、絶対に許されません。
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⭕ OK(言い換え): 「負けない体づくりをサポートします」 「季節の変わり目で、ムズムズする方へ」 「健康維持のために、毎日続けています」 →「負けない」「季節の変わり目」といった言葉で、リスナーに「察してもらう」のが精一杯のラインです。
※さらに注意!ゲストやリスナーの発言
パーソナリティが気をつけていても、ゲストの社長や、電話出演したリスナーが: 「私、これを飲んでガンが治ったのよ!」 と口走ってしまうことがあります。
生放送なら、すぐに「あくまで個人の感想であり、効果を保証するものではありません」と打ち消す訂正を入れなければなりません。 なぜなら、もし事実と異なる(法に触れる)情報を流したままにしておくと、放送法(第九条)において「訂正放送」を行うことが義務付けられているからです。
後日、番組内で正式に謝罪・訂正するという重い事態(放送事故扱い)を避けるためにも、その場での即座のフォローが不可欠なのです。
★ここがポイント!
ラジオ局の考査(チェック)担当者は、これらの表現に目を光らせています。
「本当に効くんです!」と熱弁したくても、NGワードが入っていると「その原稿では放送できません」と差し戻されます。
スポンサー商品を扱う際は、必ず事前に局の担当者に原稿を見せ、「この表現で大丈夫ですか?」と確認するのが、トラブルを防ぐ一番の方法です。
2. 著作権と「ネット配信」の罠
ラジオの放送(電波)でCDを流すことは、局がJASRAC等と包括契約を結んでいるため基本的にOKです。
しかし、注意が必要なのは「Podcast」や「YouTube」へのアーカイブ配信です。
放送で流した音楽(CD音源)を、そのままネットにアップロードすると著作権法違反になります。
ネット配信をする場合は、BGMをフリー音源に差し替えたり、トーク部分のみをカット編集したりする手間が必要です。
3. 公序良俗と誹謗中傷
「YouTubeなら言えるのに」「俺がルールだ」は通用しません。
放送法では「政治的公平性」や「公序良俗」が厳しく求められます。
放送局のイメージを背負うことにもなります。
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特定の個人やお店を攻撃する内容(営業妨害)
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差別的な用語(放送禁止用語)
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過激な下ネタ
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選挙期間中の特定の候補者の応援(※選挙運動期間は特に厳しく制限されます。
これらが含まれていると、事前のチェック(考査)で必ず弾かれます。
「自分でお金を出してる枠なんだから好きに喋らせろ!」は通用しないことを覚えておきましょう。
せっかく自分自身の番組(自身や会社、スポンサーの顔)になるのですから、
ラジオ局の方(その道のプロ)の意見や注意事項にしっかり耳を傾けて最高の番組を作りましょう。
第5章:いざ、放送開始までのステップ
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アプローチ: 地元のコミュニティFMのHPにある「お問い合わせ」から、「持ち込み番組の相談をしたい」と連絡します。
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プレゼン・考査(こうさ): 企画書を出し、面談します。ここで前述のコンプライアンス意識があるかも見られます。
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契約・入金: 基本的に「前払い」です。
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収録・放送: いよいよあなたの声が電波に乗ります!
まとめ:ラジオは「メディアを持つ」という最強の武器
自分のラジオ番組を持つことは、単なる自己満足ではありません。 「ラジオのパーソナリティをやっています」という肩書きは、ビジネスや人脈作りにおいて強力な信頼の証(武器)になります。
ルールとマナーを守って、あなただけの「放送局」を開局してみてください。その声は、あなたが思っている以上に、誰かの心に届くはずです。