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災害時にラジオが自動で起動する?その仕組みと、過去20年で命を救った起動事例を解説

「災害時に、電源を切っていたはずのラジオが突然鳴り出した!」

これは故障でも心霊現象でもありません。「自動起動する防災ラジオ(緊急告知ラジオ)」の正常な動作です。

しかし、一体どうやってラジオは「今が緊急事態だ」と判断し、勝手に電源を入れているのでしょうか?そして、実際にどのような場面で役に立ってきたのでしょうか?

今回は、少しマニアックな「自動起動の仕組み(3つの方式)」と、ここ20年の大規模災害で実際にラジオが自動起動し、住民の命を守った「具体的な事例」を紹介します。


ラジオは24時間「聞き耳」を立てている

自動起動対応のラジオは、電源がOFF(スタンバイ状態)になっている時でも、実は内部の受信回路だけはわずかな電力で働き続けています。

そして、放送局から送られてくる電波の中に、あらかじめ決められた「起動の合図」が含まれていないか、24時間体制で「聞き耳」を立てているのです。

その「合図」には、主に以下の3つの種類があります。

方式1:DTMF(電話のピポパ音)

最も古くからある、シンプルで確実な方式です。

  • 仕組み: 放送の中で、特定の「音の組み合わせ」を流します。これが合図となります。

  • DTMFとは? 「電話機のそれぞれのボタンに割り当てられた発信音」のことです。
    プッシュ回線の電話で「0」や「#」を押した時に聞こえる「ピッ、ポッ、パッ」という音、あれがDTMF音です。
    人間にはただの電子音に聞こえますが、それぞれの音は特定の周波数の組み合わせでできており、機械はそれを「数字や記号」として認識します。

  • 特徴: 仕組みが単純なため安価に導入できますが、誤作動を防ぐために起動までに数秒かかる場合があります。

方式2:EWS(緊急情報ネットワーク表示システム)

テレビやラジオでおなじみの、国が定めた標準的な方式です。

  • 仕組み: 放送局が「緊急警報放送」を行う際に送出する特殊なデジタル信号を受信して起動します。

  • EWSとは? 「緊急情報ネットワーク表示システム(Emergency Warning System)」の略称です。
    大地震や津波警報が出た際、テレビやラジオから「ピロピロピロピロ…」という独特の不気味な音が流れるのを聞いたことがありますか?
    あの音の裏で流れているデジタル信号がEWS信号です。

  • 特徴: NHKや民放各局でも採用されている信頼性の高い方式です。対象となる災害の種類によって「第1種信号(地震・津波など)」と「第2種信号(その他)」に分かれています。

方式3:Comfis(デジタル時代の高機能方式)

コミュニティFMを中心に普及が進んでいる、最新のデジタル制御方式です。

  • 仕組み: FM電波の隙間を利用して、音声とは別にデジタルの制御データを送信します。

  • Comfisとは? 「Communication & Information System」の略で、防災ラジオのために開発された高信頼の通信規格です。

  • 特徴(ここがすごい!): 従来の方式と比べて圧倒的な高性能を誇ります。

    • 超高速起動: 緊急放送受信時には、最短で約0.5秒(※)という驚異的な速さでラジオの電源が自動ONになります
      一刻を争う事態において、このスピードは大きな武器です。

    • J-ALERT連携: 国の「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」や気象庁の「緊急地震速報」にも対応可能で、これらの情報を受信すると瞬時に起動します。

    • グループ制御: 「A地区の住民だけに避難情報を流す」「消防団員だけに招集をかける」といった、きめ細やかな起動制御ができる点も大きなメリットです。


      (※起動時間は機種や電波状況により変動する場合があります)


ここ20年で証明された「自動起動」の実力(事例集)

これらの仕組みは、机上の空論ではありません。
ここ20年の間に日本を襲った数々の大規模災害において、実際にラジオが自動起動し、情報伝達の「最後の砦」として機能した事例が多数あります。

事例1:東日本大震災(2011年)でのJ-ALERT連動

岩手県宮古市(みやこハーバーラジオ)など、沿岸部のコミュニティFM局では、地震発生直後に国のJ-ALERT(全国瞬時警報システム)と連動して緊急放送が自動送出されました。
これにより、各家庭に設置されていた防災ラジオが自動起動し、大津波警報の発令をいち早く伝えました。
停電でテレビが消え、防災無線の音が届きにくい屋内においても、ラジオが強制的に鳴り響いたことで、迅速な高台への避難行動に繋がったケースが多く報告されています。

事例2:豪雨災害での深夜の避難指示(西日本豪雨・令和元年東日本台風など)

深夜から未明にかけて河川が氾濫するリスクが高まった際、自治体が出した「避難指示」を伝えるためにラジオが自動起動した事例も数多くあります。
就寝中、スマートフォンの通知音には気づかなくても、枕元やリビングで最大音量で鳴り出したラジオの警報音で飛び起き、垂直避難(2階への退避)や安全な場所への移動ができたという声は、水害のたびに聞かれます。

事例3:能登半島地震(2024年)での情報空白の解消

記憶に新しい能登半島地震でも、石川県内のコミュニティFM局(ラジオななお等)が、発災直後からJ-ALERTと連動して自動起動放送を行いました。
その後も、大規模な停電や通信障害が続く中、孤立した集落に対して「給水車の到着場所」「携帯電話の充電スポット」といった、生きるために必要なきめ細やかな情報を届け続け、情報空白地帯の命綱となりました。


まとめ:見えない信号が命を守る

DTMF、EWS、そして最新のComfis。

方式は違えど、これらはすべて「いち早くあなたに危険を知らせる」ために、ラジオの電波に乗せて送られている「見えない命綱」です。

過去の事例が証明するように、いざという時、勝手にスイッチが入って騒ぎ出す「おせっかいなラジオ」が、あなたと家族の命を救うかもしれません。

  • この記事を書いた人

マミ

ライターでラジオパーソナリティのマミです。 ただのラジオオタクです。 はがき職人(死語!)からスタートし、パーソナリティまで経験。 狭いようで深い世界。 身近な話題からマニアックなことまでわかりやすく発信します。

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